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成功者から学ぶ-さびれていく寺院と発展していく寺院の違いは?-
寺院活動の協力者をどう育てるか
真言宗豊山派常楽院(東京都板橋区)

寺院は、数十年前までは、地域のコミュニティーセンターとしての役割を果たしていた。この役割があったからこそ、寺院に求心力が生まれ、円滑な教化布教活動をすることができた。
しかし今、この役割が失われ、それとともに求心力も弱まってきている。その一方で、この流れを止めようと「地域における寺」になるべく、活動に様々な工夫をこらす寺院もあるのも事実である。東京都板橋区の真言宗豊山派常楽院(守山祐弘住職)もそうした寺院のひとつだ。
常楽院は、以前の葬儀法要を中心とした寺院活動から、広く地域に開かれた寺を目指すようになってから、まだ10年程度にすぎない。しかし行事は多様で、どれもが賑やかである。常楽院がここまで活発になったのは、優れた「協力者の育て方」によるところが大きいようだ。

常楽院の様々な催し

 常楽院は、行事の多い寺院である。施餓鬼会や節分会などの行事だけでなく、「常楽寄席」「お花見と声明の会」「フリーマーケット」など、さらには毎月のように「写経会」「御詠歌の会」「書道塾」「てん刻教室」「お香を楽しむ会」などが催されている。
 しかしこうした催しは、以前から活発に行われていたわけではない。平成4年に写経会を始め、それ以来、地域の寺となるべく、ひとつづつ新しい催しを企画してきたのである。
 常楽院は2年に、境内墓地の整備を行い、翌3年に塀や本堂、幼稚園(前野幼稚園)などの改修工事を行った。
 境内がきれいになってくると、守山住職は次のことを感じるようになってきた。「お寺はきれいになったが、そこに人が集まらなければ、空っぽの容器と同じだ。立派になった境内に見合うだけの活動をしなければならない」と。
 そして始めたのが月一回の写経会である。

 他にもいろいろな計画があったというが、あえて写経会を最初の企画にしたのは、「お寺が行うのに自然で、正統的なものを行いたかった。また、ちょうどいい先生が見つかったこともある」のだという。
 4年頃に5、6人で始めた写経会であったが、半年くらいすると次第に人が増え、今では毎回20人前後が集まるようになってきた。写経会に参加する人は、仏教に対する興味が真摯で、その後の常楽院の活動においても中心的な役割を果たしてくれたという。
 写経会が軌道にのってくると、次に書道塾、御詠歌の会、てん刻教室などを次々に始めた。書道塾は講師を外に頼んだが、御詠歌の会は先代住職夫人が、てん刻教室は守山住職が指導にあたっている。それぞれ15人前後の人が参加しており、年代的にも30〜60代が多いという(御詠歌は若干年代が高い)。
 こうして常楽院では数年間で、仏教的・伝統的で、寺院活動として基本的な催しとも言える活動を固めてきた。そして次に始めたのが、仏教の枠組みを越えた、地域の人たちを対象にした文化的な催しである。

 中でも、3、6、9月に行っている常楽寄席は、毎回、定員200名の常楽会館に入りきれないほど集まり、一寺院の行事をこえて、地域の行事として定着している。
 常楽寄席は、真打ちの落語家を中心に漫才師などを呼んで行う寄席で、8年に始められた。今年で6年目、回数にして20回をこえている。
 寄席に参加する人は、地域の人が多いが、ほとんどが檀家を通しての口コミである。また町会を通して宣伝をしたり、近くの飲食店などにポスターを貼ったり、さらには近くのショッピングセンター「イズミヤ」のチケット売場にポスターを貼るなどしての集客もしている。いろんなかたちで集客をしてきたが、回を重ねてくるにしたがってリピーターが多くなり、現在では半分以上の参加者がリピーターとなってきた。
 実は常楽院では、常楽寄席の始まる3年前の平成5年に寄席を始めていた。月1回行われている写経会の終了後、二つ目や前座などの若手を呼んで、噺を聞いていたのだ。これが思いのほか評判が良かったため、よりたくさんの人に楽しんでもらおうと企画したのが常楽寄席だったのだ。


住職は仕事をしないで任せたほうがうまくいく

 また9年からは、4月初旬の日曜日を選んで、「お花見と声明の会」を行っている。
 当日は夕方になると、境内や山門前の駐車場に次第に人が集まり、お花見が始まる。午後5時頃になると、境内で御詠歌が歌われはじめる。次第に暗くなっていく中で、境内には篝火が焚かれ、ぼんぼりにも火が灯される。しばらくして本堂で、雅楽の演奏がはじまり、続いて僧侶らによる声明がはじまる。本堂内では約40分間にわたって声明が奏上されるが、その後、会場は山門前の駐車場に移り、屋外での声明の奏上となる。屋外で行うのは、本堂に入りきれない人のためである。よりたくさんの人に声明を楽しんでもらおうというのだ。

 声明には、真言宗僧侶だけでなく、天台宗の僧侶も同時に参加する。また女性が「声女隊」として声明に参加するのも特徴的だ。
 「お花見と声明の会」は、声明、雅楽、声女隊、御詠歌など40人近い出演者と、運営を手伝う40人近いスタッフの協力で行われる。特に檀家の中には、この会を手伝うことを楽しみにしている人もいて、積極的に運営に参加する人も多いという。

よりたくさんの人に楽しんでもらおうと行う屋外での声明
よりたくさんの人に楽しんでもらおうと行う屋外での声明

 3月と10月には山門前の駐車場を会場に、フリーマーケットも行っている。40のブースを用意しているが、これも毎回、すべて埋まってしまう。常楽院で経営している前野幼稚園の児童の母親らによる参加が多いが、守山住職もブースをいつも出している。500円で小さな石の印に好きな文字を彫って渡す、てん刻の実演販売で、「住職のはんこ屋」との看板を出している。
 これらの行事や教室のほとんどは、参加者が中心となって運営を行っている。最初の立ち上げの時は、守山住職が先頭に立つが、軌道に乗ってくると、参加者の中から班長を選んで、運営は任せてしまうというのだ。「任せてしまうから、これだけたくさんの行事を行っても、そんなに大変なわけではない。逆に全部自分でやったら、とても体がいくつあっても足りない。それに住職はあまり仕事をしないで、任せてしまった方が、みんな一生懸命やるし、運営はうまくいく」と。

気軽に葬儀についての疑問を解決する機会を

 春夏の彼岸に行う葬祭セミナーも面白い。
 彼岸の入りから中日までの間、山門から本堂に向かう途中にテントを張って、葬儀用の祭壇や墓石を展示して、自由に見学してもらい、葬儀に関する様々な情報を提供するというものだ。彼岸中は、たくさんの檀家が墓参りに来る。その行き帰りにテントに立ち寄って、お茶を飲みながら世間話をしてもらおうと。気楽に葬儀に関する話ができる雰囲気をつくろうと考えたのである。
 実はこの葬祭セミナーは、株式会社東京セレモニーという葬儀社の協力で行っている。9年に始めたセミナーであるが、第1回目は常楽会館のホールに祭壇を設置して行った。しかしこの年は、セミナーに参加する人がほとんどいなかったのである。原因を探ってみたら、本堂の裏手にある常楽会館にわざわざ立ち寄って、セミナーに参加するのは、面倒だということだった。そこで、2回目からは、墓参りの途中に気軽に立ち寄れる休憩所のようにしようということになったのだ。

 このアイディアはあたり、たくさんの人がテントに寄るようになった。そして来たついでに、葬儀社のスタッフといろいろな話をするようになった。
 ここでは、「いったい葬儀にはいくらかかるのか」ということが最も話題にされるようだ。仏壇はどのくらいの金額のものを買えばいいのか、位牌はいくらくらいするのか、墓を修理したらいくらくらいかかるのかといったお金に関することがやはり多い。また、仏壇の祀り方はどうしたらいいか、法事の段取りはどうしたらいいかなども話題になる。葬儀や法事の時、布施をどのくらい渡せばいいのかといった相談もあるという。
 「一般の人は、葬儀や墓・仏壇に関してわからないことだらけだ。わからないから、みんな不安になる。でも、聞くのが恥ずかしかったりしてなかなか聞けない。葬儀社にわざわざ行く気にもなれない。それがお彼岸の時、お茶を飲む場所に、葬儀社のスタッフがいると、世間話ついでにいろいろな事が聞ける。住職に聞きにくいことも、葬儀社の人なら聞くことができるということもある。もちろん信頼できる葬儀社でなくては任せられないが、この点でも、いい人に巡り会えたと思っている」

 葬儀セミナーは、毎年、少しずつ内容を変えて行っている。できるだけ気楽にいろいろな話ができるように工夫しているためだ。
 葬儀について考える機会が少なくなっている中で、少しでも考える機会を持ってもらおうと、葬儀に関するセミナーなどを開いている寺院や葬儀社が近年、少しずつ増えてきている。しかし、前もって申込みを行い、会場に足を運び、講師の話を聞くという形式だと、参加者はどうしても増えてこない。これを、「彼岸の墓参りのついでに」というかたちにすると、興味を持っておらず、意識すらしていなかった人たちにも、葬儀への関心を呼び起こすことができる。同時に、いろいろ疑問があっても、「わざわざ聞くのは面倒くさい」と考えていた人たちに、気軽に疑問を解決する機会を提供することになるのだ。


掲示板のお寺、お寺の掲示板

 常楽院には境内を囲む壁の外側に18の掲示板が設置されている。道行く人たちに読んでもらうための、名言を記すための掲示板である。
 守山住職は、ここにありとあらゆる分野の名言を筆で記して掲示している。ゲーテやヘレンケラーといった歴史的な偉人を始め、サッカーの中田英寿選手や石原慎太郎都知事、歌手の中島みゆき氏、ソニー創業者の井深大氏の言葉、あるいは都々逸や聖書、はては幼稚園の児童の母親や檀家のおばあさんの言葉まで、守山住職がいいと感じた言葉を次から次へと書き記している。もちろん釈迦の言葉を取り上げることもあるが、それはほんの一部に過ぎない。仏教という枠組みには全くこだわらずに、名言を書き記しているのである。

 これらの言葉を選ぶにあたって、守山住職にはひとつのこだわりがある。「私がいいと感じるものを書いているのだが、特に気をつけているのは、通りがかりの女子高生の目をひけるような言葉であることだ。若い女性は、実に感性が優れている。若い女性に訴えかけることのできる言葉ならば、どんな人からも関心を持ってもらえるが、女子高生がつまらないと感じるものは、だいたい、どんな世代の人も感心を持たない」
 7年頃から始めた掲示板布教であるが、最近では常楽院のことを、「ああ、あの掲示板のお寺ね」と言う人が出てくるほど定着した。守山住職としては「掲示板のお寺じゃなくて、お寺の掲示板です」と思いながらも、「まあいいか」と感じているという。それだけ掲示板の力が大きということで、常楽院を強く周囲に印象づけているのである。
 実際、掲示板の前に立ち止まって、言葉を味わい、次の掲示板の前に移ってじっと見ているという人は多い。そこに立ち止まった人の心に、「何か」を与えていることは間違いないであろう。

掲示板とそこに書かれた様々な言葉 掲示板とそこに書かれた様々な言葉 掲示板とそこに書かれた様々な言葉
掲示板とそこに書かれた様々な言葉


任せることの大切さ

 常楽院の活動は実に多岐にわたるが、守山住職は「そんなに忙しいわけではない」のだという。実はこれらに加えて、前野幼稚園、野球チーム「常楽」など、まだまだたくさんの活動を行っている。さらに守山住職は、大正大学で「法儀研究」「社会教化演習」などの講座を持っている。これで忙しくないわけはないと思うのだが、「だいたいのことは、誰かに任せてしまっている」から、住職自身がしなくてはならないことは案外少ないのだという。
 寺院は、法人であるが、その活動にはやはり代表者である住職の考えが大きく影響する。むしろ、いい活動ができるかどうかは、どれだけ住職の考えを具体的な寺院活動に表現できるかにかかっていると言うこともできる。だから、多くの住職は、自らが先頭に立ち、細かなことまで自分で実行するということになる。誰かに任せるにしても、細かなところにまで支持をするということが多い。

 しかし守山住職は、任せたら全部任せるのである。もちろん、最初だけは守山住職が運営に携わるので、基本的な考えや流れは踏襲される。踏襲されながらも、担当した人は、「任された」という意識から、よりよい催しにするために、様々な工夫をするのである。
 寺院の活性化のために最も大切なのは、住職の高い意識であるが、それをサポートする周囲の人たちの力も不可欠である。活発になればなるほど、周囲の人の力が必要になってくる。だからこそ、寺院の力になってくれる人に、「いかに任せるか」が大切になってくるのである。

(月刊『仏事』2003/7月号より)

 
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